2006年 06月 06日
4月に観た映画 |
『ファイヤーウォール』
ポール・ベタニーの仕事選び(というより選ばなさ)は、マイケル・ケインを髣髴とさせ、スキャンダルにまみれたジュード・ロウよりも後継者然としている。役者としての仕事とお金儲けとの間に貴賎を問わないという意味では大先輩といえるハリソン・フォードも寄る年波には勝てずちょっと太刀打ちできてない。
『ヒストリー・オブ・バイオレンス/愛と暴力の対立』
あっという間に終わってしまう殺戮に、アクション的要素は微塵も無く、ヴィゴ・モーテンセン扮するトム/ジョーイの圧倒的な強さのみが印象に残る。戦う度に傷つきはするものの凡百のハリウッド・アクション以上に負ける気がしない。その殺しっぷりは颯爽としていて、ターミネーターみたいで、笑っちゃうくらいに滅法強い。
『クラッシュ』
「拒絶」の容易さを描いた物語のトーンとは裏腹に、作品全体から醸し出されるオプティミズム。その劇的効果を狙うがゆえに、発端部分が饒舌過ぎて露悪的にすら思えるが、実際のLAを知ればそれもまたリアルと感じられるのか。しかしながら、これは実話でなく根本的に天使の降臨と「拒絶」の後の「赦し」の物語なのだから、もっとこのLAロコ・ファンタジーにフィットさせるべきと思う。
『ウォレスとグルミット/野菜畑で大ピンチ!』
正統進化を見せるシリーズ4作目にして、初の長編。長くすることで生じる問題を『危機一髪!』で洗い出した後ゆえに、長さを感じさせないテンポの良さのまま79分を押し切る。原題から推測されるようにベースは狼男ものかと思いきや、随所に『フランケンシュタイン』を感じさせる演出や、過去のシリーズ作品を含む様々な映画への目配せが心地良い。しかし、拡大再生産という意味では原型となる『ペンギンに気をつけろ!』に及ばないという意見も分かるし、いよいよ『チーズ・ホリデー』が稀有な作品となったとも言える。
『キスキス、バンバン』
シェーン・ブラックにとってこの初監督作は20年間ハリウッドを生き抜いた褒美。クライマックス、フットボール球場の電光掲示板で私立探偵ブルース・ウィリスがステップを踏む『ラスト・ボーイスカウト』やハリウッドの虚実を自由に往来する『ラスト・アクション・ヒーロー』の脚本家にとって、煌びやかなハリウッド・バビロンを題材にした探偵ものは正に集大成。デビュー作『リーサル・ウェポン』同様、クリスマス・ソング流れるLAから始まるバディ・ムービーでもあり、魑魅魍魎が跋扈する世界という意味ではこの監督、快作『ドラキュリアン』の脚本家でもあるのだ。
『トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男』
VH1の『クラシック・アルバム』特別篇といった趣きだが、邦題にある『いとしのレイラ』の楽曲制作を深く掘り下げるわけでも、『永遠のモータウン』のように、聴かせる、音楽映画として成立している訳でもなく、あくまでも音楽を生業としてきた人物伝としてのドキュメンタリーという視点を崩さない。その意味では音楽的功績以上に「マンハッタン計画」との関わりが耳目を惹いてしまうのも事実である。
『アンダーワールド/エボリューション』
『ブレイド』シリーズや『ハムナプトラ』シリーズなど、ホラー・キャラクターを使ったアクション・フリックの系譜に連なる前作は、プロダクション・ニュースの惹句に「ホラー版ロミオ&ジュリエット」と謳われ、出来上がって以降もこの手の元祖たる『クロウ』シリーズからの色濃い影響を指摘されるなどオリジナリティの面で旗色が良いとはいえないが、続篇における物語の発展のさせ方を見ると監督のレン・ワイズマン、実に好感が持てる。個人的にはこの系譜、前述したコミック作品の原作が起源などではなく、ホラー要素を見事なまでにスポイルした『ハイランダー』シリーズや、その礎となったであろう『キャプテン・クロノス/吸血鬼ハンター』に端緒を求めたいがゆえに、ケイト・ベッキンセイルのクール・ビューティーっぷりはキャロライン・マンローの妖艶さの嫡子であると断言したい。
『ドゥーム』
この映画で特筆すべきは、ゲーム画面の扱い方であろう。実際そこに至るまでの見せ方は、爆発を繋いで娯楽映画を紡ぎ出すシルバー・ピクチャーズ出身のアンジェイ・バートコウィアクだけあってSFマインドに欠けてこそすれ手堅い。それだけにクライマックスで一度意識を失った主人公が目覚めた途端、一人称の目線カメラとなって延々と殺戮を繰り広げる様は一種異様である。コントローラーを持たない観客にその画面はいったいどんな意味があるのだろう。しかし、それを除けばドラマ部分も含め意外に悪くない作品である。
ポール・ベタニーの仕事選び(というより選ばなさ)は、マイケル・ケインを髣髴とさせ、スキャンダルにまみれたジュード・ロウよりも後継者然としている。役者としての仕事とお金儲けとの間に貴賎を問わないという意味では大先輩といえるハリソン・フォードも寄る年波には勝てずちょっと太刀打ちできてない。
『ヒストリー・オブ・バイオレンス/愛と暴力の対立』
あっという間に終わってしまう殺戮に、アクション的要素は微塵も無く、ヴィゴ・モーテンセン扮するトム/ジョーイの圧倒的な強さのみが印象に残る。戦う度に傷つきはするものの凡百のハリウッド・アクション以上に負ける気がしない。その殺しっぷりは颯爽としていて、ターミネーターみたいで、笑っちゃうくらいに滅法強い。
『クラッシュ』
「拒絶」の容易さを描いた物語のトーンとは裏腹に、作品全体から醸し出されるオプティミズム。その劇的効果を狙うがゆえに、発端部分が饒舌過ぎて露悪的にすら思えるが、実際のLAを知ればそれもまたリアルと感じられるのか。しかしながら、これは実話でなく根本的に天使の降臨と「拒絶」の後の「赦し」の物語なのだから、もっとこのLAロコ・ファンタジーにフィットさせるべきと思う。
『ウォレスとグルミット/野菜畑で大ピンチ!』
正統進化を見せるシリーズ4作目にして、初の長編。長くすることで生じる問題を『危機一髪!』で洗い出した後ゆえに、長さを感じさせないテンポの良さのまま79分を押し切る。原題から推測されるようにベースは狼男ものかと思いきや、随所に『フランケンシュタイン』を感じさせる演出や、過去のシリーズ作品を含む様々な映画への目配せが心地良い。しかし、拡大再生産という意味では原型となる『ペンギンに気をつけろ!』に及ばないという意見も分かるし、いよいよ『チーズ・ホリデー』が稀有な作品となったとも言える。
『キスキス、バンバン』
シェーン・ブラックにとってこの初監督作は20年間ハリウッドを生き抜いた褒美。クライマックス、フットボール球場の電光掲示板で私立探偵ブルース・ウィリスがステップを踏む『ラスト・ボーイスカウト』やハリウッドの虚実を自由に往来する『ラスト・アクション・ヒーロー』の脚本家にとって、煌びやかなハリウッド・バビロンを題材にした探偵ものは正に集大成。デビュー作『リーサル・ウェポン』同様、クリスマス・ソング流れるLAから始まるバディ・ムービーでもあり、魑魅魍魎が跋扈する世界という意味ではこの監督、快作『ドラキュリアン』の脚本家でもあるのだ。
『トム・ダウド/いとしのレイラをミックスした男』
VH1の『クラシック・アルバム』特別篇といった趣きだが、邦題にある『いとしのレイラ』の楽曲制作を深く掘り下げるわけでも、『永遠のモータウン』のように、聴かせる、音楽映画として成立している訳でもなく、あくまでも音楽を生業としてきた人物伝としてのドキュメンタリーという視点を崩さない。その意味では音楽的功績以上に「マンハッタン計画」との関わりが耳目を惹いてしまうのも事実である。
『アンダーワールド/エボリューション』
『ブレイド』シリーズや『ハムナプトラ』シリーズなど、ホラー・キャラクターを使ったアクション・フリックの系譜に連なる前作は、プロダクション・ニュースの惹句に「ホラー版ロミオ&ジュリエット」と謳われ、出来上がって以降もこの手の元祖たる『クロウ』シリーズからの色濃い影響を指摘されるなどオリジナリティの面で旗色が良いとはいえないが、続篇における物語の発展のさせ方を見ると監督のレン・ワイズマン、実に好感が持てる。個人的にはこの系譜、前述したコミック作品の原作が起源などではなく、ホラー要素を見事なまでにスポイルした『ハイランダー』シリーズや、その礎となったであろう『キャプテン・クロノス/吸血鬼ハンター』に端緒を求めたいがゆえに、ケイト・ベッキンセイルのクール・ビューティーっぷりはキャロライン・マンローの妖艶さの嫡子であると断言したい。
『ドゥーム』
この映画で特筆すべきは、ゲーム画面の扱い方であろう。実際そこに至るまでの見せ方は、爆発を繋いで娯楽映画を紡ぎ出すシルバー・ピクチャーズ出身のアンジェイ・バートコウィアクだけあってSFマインドに欠けてこそすれ手堅い。それだけにクライマックスで一度意識を失った主人公が目覚めた途端、一人称の目線カメラとなって延々と殺戮を繰り広げる様は一種異様である。コントローラーを持たない観客にその画面はいったいどんな意味があるのだろう。しかし、それを除けばドラマ部分も含め意外に悪くない作品である。
by scarpiaii
| 2006-06-06 11:33
| 映画館